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公開講座:バロック舞曲の演奏法と鑑賞法 〜 バッハのフランス組曲を中心に
第2回:サラバンドとアルマンド

バロック時代のヨーロッパ宮廷に花開いた華麗な舞踏の数々。 それらは実際にどのようなステップで踊られていたのでしょうか? バッハはそれらを鍵盤音楽に移すにあたって何を意識したのでしょうか? バロック舞曲をリアルに演奏し鑑賞するための秘訣を披露します。


1.サラバンド

1.1 サラバンドのリズムを体感しよう

1.1.1 特徴あるリズム

短+長(四分音符+二分音符)、 長+短(二分音符+四分音符)
それぞれ単独または両者の組み合わせ

1.1.2 リズム練習:手を動かしてみよう

G.F.ヘンデル:組曲ニ短調より サラバンド(チェンバロ演奏)
 Check! リズムは「短+長」のみ。3拍目をあえて表さないように。
M.マレ:「スペインのフォリア」(ヴィオラ・ダ・ガンバ+通奏低音 CD)
 Check! リズムは「短+長」と「長+短」が交互。弦楽器の音が決して平らでなく、舞踏のリズム感をよく表現していることにも注目。

1.2 映像で見るサラバンドのステップ

フランスでのサラバンドは舞踏会で皆が踊るものではなく、 宮廷バレエでプロのダンサーやそれに匹敵する技量を持った王侯貴族(ルイ14世など)のための技巧的な踊り。

1.3 バッハのサラバンドにおけるオーケストラ様式と歌唱様式

ここでいう「オーケストラ様式」とは:
 舞踏の伴奏音楽をオーケストラが奏でるように、基本的に和声的に作られたもの。

ここでいう「歌唱様式」とは:
 ソプラノ声部が他の声部よりも圧倒的に優位に立って歌唱風の旋律を奏でるもの。 また特に右手がソプラノ声部だけを弾くことから、2段鍵盤を両手で使い分けて弾けるもの。

1.3 演奏の実際(「フランス組曲」の全サラバンド)

・第6番:最もオーケストラ風。イタリア風の即興的パッセージ。
・第1番:オーケストラ風。声部間の旋律の入れ替え(転回対位法)を用いる。
・第4番:イタリア由来の歩行バス。転回対位法を用いる。
・第3番:やや歌唱風。転回対位法を用いる。
・第2番:歌唱風+イタリア風の歩行バス。
・第5番:最も歌唱風。

2.アルマンド

2.1 よく分かっていない「アルマンド」

2.1.1 古いアルマンド

例:O.ギボンズ:アルマンド「王様の宝石」 快活な踊り(ヴァージナル演奏)

2.1.2 バロックの合奏用アルマンド

例:A.コレッリ:合奏協奏曲 ヘ長調Op.6-9より アルマンド(Allegro)(CD)
 イタリア人コレッリのアルマンドはAdagio から Presto まで多彩。概して快活。

2.1.3 踊られるアルマンド

舞踏譜の残っているアルマンドはたった1曲(快活)

2.2 バロックの鍵盤用アルマンドの特徴

(1) 概して遅い(バロック中期、組曲の成立期からすでに)。舞踏とは別のものとして発展。

(2) 分散様式を多く用いる
分散様式 style brizeスティル・ブリゼ「砕かれた様式(仏)」とは:
17世紀フランスのリュート音楽で始まった、多声部を分散和音の中に織り込む様式。 音が減衰してしまう撥弦楽器で、多声音楽を優雅に演奏するために生まれた。 イタリア音楽を除く大抵のチェンバロ曲は、バロック時代を通してほとんどこの様式の影響を受けて発展した。

分散様式の分析例:フランス組曲第1番アルマンド冒頭(譜例)

2.3 演奏の実際(「フランス組曲」の全アルマンド)

・第1番:最も伝統的。分散様式に満ちている。
・第2番:右手は分散様式、左手は一貫して通奏低音風(特にイタリア由来の歩行バス)。
・第3番:外見はインヴェンション風。ただしアルマンドとして捉えるならば、冒頭モチーフの中にも分散様式を見出すべき。
・第4番:アルペジャンド前奏曲(分散和音による前奏曲)風。途中から歩行バスが加わる。伝統的なアルマンドとは異なりながら、分散様式は一貫して用いられる。
・第5番:通奏低音に支えられた歌唱風。左手は通奏低音の旋律と和音とを分散様式でまとめたもの。右手は主要な音をたどってゆくと、伝統的なアルマンドには無い息の長い一貫した旋律が浮かび上がる。
・第6番:外見はイタリアの歩行バスに支えられたヴァイオリン音楽風。ただしアルマンドとして捉えるならば、速すぎるテンポや切れのよいアーティキュレーションは避けるべき。


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