チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

チェンバロ日誌(2005年2月)

チェンバロ日誌
2月15日(火)
 今日は月に一度の長岡教室の日です。 会場はウェディングドレスの注文制作なども手がける仕立て屋さんで、 定休日にご厚意で使わせていただいています。 午前中に見附のスタジオからチェンバロを運び込んで昼からのレッスンに備えます。 冬場は夜の間に完全に冷え切った楽器が会場に運び込んでからではいつまで経っても暖まらず、 調律が始められません。 そこで見附のスタジオの空調を夜明け頃からタイマーで作動して楽器を暖めておき、 しっかり梱包して車に積み込むようにしています。
 毎月5と10のつく日はこの会場の前の通りに「市」が立ちます。 今日もチェンバロを弾きながらガラス越しに活気が伝わってきます。 遠目にもみかんの鮮やかなオレンジ色がおいしそうに目を引きます。
2月17日(木)
 昨日は隔週の新潟教室の日でした。 会場は自宅で音楽教室を主宰されていてご自身はヴァイオリンを教えていらっしゃる先生のところで、 空いている一室をお借りしてその都度チェンバロを運び込んでいます。
 この日に限って用事や風邪などで半分もの生徒さんがお休みしてしまいました。 重なるときは重なるものですね。 空いた時間にはまず東堀通りに昨秋オープンした輸入クラシックCD専門店「コンチェルト」に、 注文しておいたCD(バッハ、シュッツ、グラウプナー)を買いに行きました。 どんな無理な相談を持ちかけても、世界中から探し出して取り寄せてくれる親切なお店です。
 次の空き時間には、夕方のリコーダーのレッスンのための通奏低音(チェンバロ伴奏)を練習しました。 私のチェンバロ教室にはチェンバロソロだけでなく、 リコーダーなどの旋律楽器を私のチェンバロに合わせてアンサンブルを学ぶコースもあるのです。
 次の空き時間は3月21日にゲスト出演するメサイア演奏会の通奏低音の練習に有効利用しました。 2時間半もかかる大曲ですので、ちょっとした時間を見つけては早め早めに練習を進めています。
2月19日(土)
 恒文社発行の季刊誌「新潟発」の春号の連載「新・田舎生活で行こう!」に私の記事が載ることになりました。 今日はその打ち合わせのために担当の方がスタジオに来て、撮影の日時などを相談しました。 カラーで4ページだそうです。
2月22日(火)
 来月の演奏会で大バッハの次男であるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ作曲のソナタを演奏します。 今日は主にこの曲に的を絞って練習しました。 私にとって彼の曲を弾くのが初めてであるだけでなく、 彼の曲を聴いたこともほとんどありませんし、 同時代に書かれたほかの人の作品すらまともに取り組んだことのない未知の領域です。 お父さんの大バッハの作品はもちろんたくさん弾いてきていますが、 世代が一つ違うと音楽の様式はまるで異なり、 装飾音の奏法や即興演奏の様式も含めてかなりいろいろなことを勉強しなおさないといけません。
 まずはいろいろ聴かねばと思い、 彼の鍵盤音楽全集のCD(現在12枚まで発売されたところで、 最終的には30枚!を超えるそうです)を端から聴いています。 全集録音の偉業に取り組んでいるのは私とさほど年の違わない東欧の奏者ですが、 彼は同時にエマヌエル・バッハの鍵盤音楽の全集楽譜の出版も準備しているとのことです。 今まで楽譜の校訂を行なうなどというのは余程キャリアを積んだすごい人であって、 自分の年と比較することなど考えてもみませんでしたが、 自分とさほど変わらない若い人がこんなにすごいことをしているとは! というより、私のほうがそういう年齢になってきたということでしょうか。 猛烈に刺激になりますね! かなり焦りますね! その東欧の奏者の年齢に気づいた日以来、 私の練習にはずいぶん気合が入っています。
2月24日(木)
 今日は恒文社発行の季刊誌「新潟発」の取材でした。 カメラマンはこのために遠路東京から来たのでした。 特集のタイトルが「新・田舎生活で行こう!」なのですが、 私は見附はちっとも田舎ではないと思っていますし、 先方もそのことは少々気にしているようですが、 そこはプロの仕事ですからきっとうまくまとめてくださるのでしょう。 「音楽家が活動の拠点を据えて貸しスタジオまで開設する環境」という意味では、 他にこんなものがあるのは首都圏や京阪神圏くらいでしょうから、 その基準ではじゅうぶん田舎と言えなくもありませんが、 それを言うのでしたら「新・地方生活で行こう!」でしょうか。 あまりインパクトのあるタイトルではありませんが。
 編集の方はあらかじめ私のホームページをよく読んでいらっしゃったので、 インタビューはその場面を撮影するために行なったような感じで、 特に付け加えなければならないこともありませんでした。 それに引き換え撮影のほうは大忙しで、 楽器を細部まで拡大して撮ったり、 楽譜やCDの棚や道具箱も撮ったり、 私が弾く姿、調律する姿、弦をはじく爪を削りなおしている姿、 楽譜を開いて特徴的なところを指差して説明している姿、 隣室でパソコンに向かっている姿まで撮るなど、 滞在の1時間半のあいだずっと動きっぱなしでした。
 発売は3月30日で、 本文4ページのほかにタイトルページが1ページの合計5ページオールカラーだそうです。 今まで取材を受けて掲載された面積の記録を一気に更新です。 どんな誌面になるのでしょうか。
2月27日(日)
 昨日は私としては非常に珍しいことに、 20世紀の作曲家ショスタコーヴィッチの室内楽曲だけでまとめられた演奏会を聴きに行きました。 4月4日の演奏会で共演するピアニストの石井朋子さんが出演する縁で、 古典派やロマン派の音楽すらめったに聴かなかった私が一大決心をして出かけた次第です。 何しろショスタコーヴィッチの音楽はただの一度も耳にしたことがなかったので、 メインのピアノ三重奏はCDも調達して事前に勉強していきました。 和声や旋律よりも対位法を重視する作曲法(と私は感じました)の結果として、 驚いたことに私にとってはバロックよりさらに古いルネサンスの対位法に近いものを感じて、 何だかずっと前から知っていたような安心感を覚えてしまいました。 (ショパンを聴いても全然安心しないのですけれど。) 夜布団に入ってからもこの曲の各楽章の断片が順々に頭の中で鳴り続けていました。


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