チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

チェンバロ日誌(2005年8月)

チェンバロ日誌
8月4日(木)
 11月から見附チェンバロスタジオで新しい演奏会シリーズを始めることにしました。 今までは新潟市や横浜での「チェンバロ名曲探訪」と同じ内容を何度かスタジオでやっていましたが、 50人は楽に入れる会場のために組んだプログラムをそのまま十数人の親密な空間に持ってきても、 どうも壁の外に向かって大見得を切っているような妙な感じがあったのです。 もっとお客様とも一緒に演奏しているような親密さを大切にするプログラムにしたいと思い、 それにせっかく楽器が3台もある環境をフルに使わないのはもったいないので、 思い切ってスタジオだけの特別のシリーズにすることにしたのです。 今までスタジオでの演奏会にいらっしゃるのは中越地区の方がほとんどでしたが、 これを機に新潟方面の方にもスタジオにおいでいただきたいと思っています。
8月6日(土)
 昨日は毎月開催のチェンバロライブの2回目、しかし大変な猛暑です。 たとえ演奏の仕事のためにでも一歩も外に出たくなくなるほどの暑さの中、 はたしてチェンバロを聴きにいらっしゃるお客様はいるのでしょうか? いらっしゃいました。 こんなに暑い中いらっしゃった貴重な2人のお客様は、 普段の10人以上と同じくらい嬉しかったです。
 そうなればもうお客様と親しくお喋りしながら、 楽器の仕組みを見せて差し上げたり、 鳥の鳴き声の曲ではその声部だけあらかじめ弾いて説明したり、 時間は少々無視していくつもアンコールを弾いたり、 「弾いているところの手が見たい」とのご要望に応えて演奏中鍵盤の近くに来ていただいたり、 生のチェンバロは初めてというお客様にせいいっぱいお楽しみいただけたと思います。
 本当のサロン音楽というのはこういうのを言うのでしょう。 この日のお客様も貸し切り状態のレストランで演奏家を独占するという幸運をお喜びのようでした。 初対面のお客様と3人きりの状況に置かれても決して気まずい雰囲気にならないように盛り上げるのも、 これからの音楽家に求められる資質かもしれませんね。
8月15日(月)
 これから大小さまざまな演奏会が目白押しです。 「今後の演奏予定」のページの読みにくいこと!
 本格的な自主企画のシリーズ物とは別に、その時々に依頼される小さな演奏会もたくさんあり、 そのような小さな演奏会はとても大切です。 まず、私が個人の力で宣伝できる範囲を超えて、 いままでチェンバロの生の音を聴いたことのない多くの方々を主催者がいっぺんに集めてくださること。 そして選曲もおのずと初めての方にも聴きやすい小品が中心になりますが、 本格的な自主企画のシリーズ物を積み重ねてたくさんたまったレパートリーの中で、 「あの曲は特にかわいらしくて美しくて、また弾きたい」と思ってもなかなか機会がなかった珠玉の小品を、 そのような演奏会では自由自在に使いこなすことができることです。 小さな演奏会だからといって決して手は抜きません。 前から弾きたくて楽しみにしていた珠玉の小品たちがまた弾けるのですから尚更です。
 お気に入りのレストランで、いつもフルコースのディナーばかり食べるのでなく、 たまにはランチタイムやティータイムでそのお店の別の味を楽しむように、 私の演奏会もどうぞ大小取り混ぜてお付き合いいただければと思います。
8月17日(水)
 その「前から弾きたくて楽しみにしていた珠玉の小品」(8月15日の日誌参照)を9月2日のチェンバロライブで早速弾くことにしました! この回のテーマを「涼を呼ぶ音色」としましたが、実際に涼しい音色を使った曲だけでなく、 涼しさを想像できる曲にまで範囲を広げて夏らしく「波」、そして「さまよう亡霊」(!) 宮廷音楽としてのチェンバロ曲なので日本の怪談のようなオドロオドロシイものではありませんが、 れっきとしたクープランの名曲です。
 この2曲は翌々日の曽我・平澤記念館でも演奏しますが、 季節が巡ればまた違った曲を弾きたくなりますから、 それ以降は当分(何年も?)弾く機会がなさそうです。 どうぞお聴き逃しなく!
8月20日(土)
 昨日は住宅展示場のモデルハウスでチェンバロを弾いてきました。 吹き抜けのリビングは椅子を十数脚並べても余裕のスペースで、 落ち着いた感じのインテリアとも相俟って感じのいいコンサートになりました。 1時間半ほどの演奏の後はお客様と一緒にティータイムでお喋り。 モデルハウスでコンサートができるということは、 同様に一般の家庭でもできるということですね。
 同じ会場で過去にはピアノを持ち込んでフルートとのジョイントコンサートも行われたそうですが、 室内という空間にピアノの音が大きすぎて圧迫感があったとのことです。 「ここの空間の広さにチェンバロはちょうどいい」との主催者のお考えにより、 私のチェンバロがこちらのモデルハウスに呼んでいただけるのは今回で3回目になります。
8月23日(火)
 甲府に行ってきました。 来月23日のカーブドッチでの演奏会で共演するテノールの片野氏と打ち合わせのためです。 彼が助教授を務める山梨大学にあるチェンバロを使って、 共演する予定の曲を一通り合わせて解釈やテンポなどを話し合い、 プログラムも最終決定しました。 一部に曲の差し替えと追加もありますので詳細は「今後の演奏予定」のページをご覧下さい。 またアンコール用に素晴らしい曲が決まりました。 アンコールなので当日まで秘密ですが、 これだけでもお聴きいただきたいような美しい曲です。 お楽しみに!
8月27日(土)
 ピアノ2台とヴァイオリンとチェロによる室内楽のコンサートに行ってきました。 40席ほどの会場もまさに「室内」といった規模です。 「20世紀ロシアの作曲家たち」と題して、私にとって全く未知の領域が演奏され、 かろうじて名前を聞いたことがあるのがアレンスキーただ一人でした。 この人だけが19世紀から活動をしていた少し古い人で、 作風が私にも理解できる和声音楽だったからという理由だけではないでしょうが、 「何回でも聴きたい!」と思うほどすばらしい音楽でした。 そのうちの一部はフーガの形式(チェンバロの時代に発達した古い形式です)で書かれているのですが、 2台のピアノからステレオ効果満点、迫力満点で押し寄せてくる旋律の絡み合いは生演奏ならではでした。 この古い形式に対する作曲家の尊敬の念のようなものを、 演奏者もまた感じ取って我々聴衆に伝えてくれたような気がしました。 演奏家である私はフーガという古い形式を尊敬するからフーガを弾くのですが、 作曲家は自らフーガを作曲することによってこの形式に対する尊敬を表すのですね。


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