チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

チェンバロ日誌(2006年4月)

チェンバロ日誌
4月6日(木)
 長野県須坂市までチェンバロとヴァージナルを車に積んでいき、 地元ピアニストとのジョイントコンサートに出演してまいりました。 日本ピアノ調律師協会信越支部主催のコンサートで、 国際標準ピッチa=440Hzにちなんで4月4日に全国的に行われるさまざまな催しの一環です。 昨年の4月4日に新潟で同様の企画を行いましたが、 幸い好評だったために今年も多少形を変えて長野県の方々にもお聴きいただくことになったものです。
 一言で言えば「とても楽しかった!」です。 3台の楽器を使って400年間の鍵盤音楽を一気に旅するこの企画ですが、 冒頭にいきなり太鼓を持って登場し、 ルネサンス式のお辞儀をし、 王侯貴族が威厳をもって舞ったパヴァーヌ(鍵盤楽器のレパートリーでも最古の部類です)をピアニストのたたく太鼓に合わせて演奏すると、 ノスタルジーたっぷりに一気に450年の昔にタイムスリップです。 太鼓は即興的精神で音楽の進行に応じて音色や音量を見事に変えてくださいました。 「アンサンブルの楽しさ」ですね。
 バロックを経て古典派まできたところでハイドンのソナタの1楽章をチェンバロとピアノで続けて弾き比べをしました。 お互いの演奏を聴くのは本番のステージ上が初めてでしたが、 テンポも強弱もアーティキュレーションも全く違う演奏で、別の曲かと思うほどなのです! 各々が楽器に合った表現を求めた結果として別の曲が生まれるというこの経験も、 広い意味で「アンサンブルの楽しさ」と言えるでしょうか。 ステージ上の私も「次はどう来るか?」とわくわくして聴けました。
 ピアノによるロマン派音楽を経てフランス近代のドビュッシーでプログラムを終え、 ピアニストはそのままアンコールにドビュッシーの小品「花火」を本当にリアルにパッと弾き切りました。 アンコールの王道ともいえる選択でしょうか。 対する私のアンコールは、 バロック風の短い舞曲なのに何やら聴いたことのあるメロディーが出てきて微笑ましくなる自作自演。 各々が自分のキャラクターに合ったアンコールを用意した結果として、 全く違ったタイプのものが出てきたこのことも、 広い意味で「アンサンブルの楽しさ」と言えるでしょうか。
 よく聴かれるピアノと、あまり聴かれないチェンバロを並べて聴き比べるというこの企画は、 チェンバロを紹介する役目だけでなく、 ピアノとはこういう楽器だったのかという再発見をさせてくれました。 それは当日ご来場のお客様だけでなく、もちろん私も、 そしてピアニストや主催者の調律師協会の方々も同じ思いなのではないでしょうか。
4月7日(金)
 昨日は遠方からスタジオに来客でした。 何と近畿地方から(スタジオ来訪の遠距離記録更新)、 チェンバロを間近に見たくてインターネットで検索して目に留まったのだそうです。 こんなに遠くから私の楽器を見に来てくださるとは、なんと嬉しいことでしょう!
4月14日(金)
 16日の演奏会まであと2日。 いまプログラムの原稿を作っているところで、印刷は明日です。 広くない会場(100人未満)なのでプログラムも自分のパソコンで印刷できる量です。 前もって大体のレイアウトはしておくのですが、 直前になって演奏順を入れ替えるようなことになっても対応できるのがいいところです (幸い今回もその必要はありませんでしたが)。 今回は歌の曲もあるので歌詞訳も配りますが、 より素敵な言い回しを時々思い付いたりして直していますから、 やはり印刷は明日のほうがいいでしょう。
 弦をはじく爪のばらつきも整えないといけません。 鷲の羽への交換は終わりましたが、 使い込むうちに弱くなり始めているものも出てきました。 「本番直前にそんな事していて大丈夫?」とご心配でしょうか。 音楽の練習は(他の芸術やスポーツにもあることでしょうが)、 作品を分析して方向を見定める時期、 がむしゃらに仕込む時期、 少し放置して熟成させる時期、 最後の調整をする時期、 といった感じに進んでいくといいようなのです。 「本番直前に懸命に指の練習に追われるようではいけない」とは、 多くの先人たちが語っていることです。 (もちろん、いつも順調に練習が進むとは限らないのですが。)
4月17日(月)
 昨日の演奏会は盛況でした! ご来場下さいましたお客様にこの場を借りてお礼申し上げます。 4月に入っても寒い日が続いたからなのか、 一週間前のチケット売れ行きが20枚という有様で「いったいどうなってしまうんだ!?」 と不安だったのです。 ところが先週半ばに新潟市内で桜の開花宣言が出てから暖かい日が続き、 昨日の会場周辺(白山公園から信濃川やすらぎ堤あたり)は一面満開の桜で本当に素晴らしく、 皆様外出したい気分になったのか直前になって急にチケットが売れ出し、 蓋を開けてみれば62名様のご来場。 開演直前に椅子を追加しなければならないほどでした。 あの会場(りゅーとぴあスタジオA)に椅子を平置きにして使う方法としては気持ちよく聴ける限界の人数だったでしょう。 次回からは客席を階段状に組んで、 もっと多くのお客様がいらっしゃっても大丈夫なように工夫します。
 あの会場は本当に小さな余韻の細部までよく聞こえます。 チェンバロの音が最後に消えてなくなる瞬間もそうですし、 昨日のようにバロックの声楽で言葉のニュアンスを大切に語るように歌う語り口も、 あのような響きと適度な狭さでこそだと思います。 そしてあの狭さのわりに空調が非常に優秀なことにいつも感心します。 音が全く聞こえないほど静かで、風が直接吹き降ろす不快感もほとんど無く、 温度や湿度の変動が同規模の他の会場とは比べられないくらい小さいのです。 会場の職員の方にそのことをお伝えしたところ、 特に私のチェンバロ演奏会の時には変化を最小に抑えるために、 制御室で手動で懸命に操作をしているとのことで恐縮してしまいました。 お客様の出入りがあったり、客席照明を上げ下げしたりするたびに、 自動運転だけではどうしてもある程度の変動は避けられないのだそうですが、 チェンバロの調律が温度や湿度の変動ですぐ狂うことを理解して自主的に対処してくださっていたのです。
4月18日(火)
 昨日の日誌に少々補足です。 直前になって急にチケットが売れたことを新潟市在住の知人に話したところ、 「新潟の人はいつもそうだよ。天気のせいだけではないでしょう。」 今まで私がここでおこなってきた演奏会はそれほど極端ではなかったのですけれど。 もしかしたら、今まではチェンバロがものすごく好きな(だから早めにチケットを買う)お客様ばかりだったのが、 今回はもう少し普通のお客様がたくさんいらっしゃったということなのでしょうか。 チェンバロが広まってほしいと願う私には嬉しいことです。
4月29日(土)
 日誌を10日もサボっていたのは、書くことが無かったからではなくて書く時間がなかったからでした。 20日(木)は横浜への移動、 21日(金)は横浜での演奏会、 22日(土)は水戸に移動し、 知人宅のとてもすてきな別棟でチェンバロ体験レッスン会、 23日(日)はそこでホームコンサートをおこない深夜に帰宅、 24日(月)は疲労がたたって熱を出し、 しかしこの時期に何日も寝込んではいられないので頑張って寝て頑張って直し、 25日(火)は中小企業大学校三条校で女性リーダー研修の一環としてロビーコンサート、 26日(水)はチェンバロを新潟市内に運び込んでの月に2回の移動教室、 27日(木)は昼にスタジオで1人レッスンをした後に新潟市内のプレイガイドにチケットとチラシを届け、 そのままスペイン・ルネサンス期の幻の弦楽器「ビウエラ」のリサイタルを聴き、 28日(金)は午前中にスタジオで1人レッスンをした後に、 前日時間が足りなくて回りきれなかったプレイガイドにチケットとチラシを届けるために新潟に行きました。
 それぞれ詳しく書き始めると止まらないので、今日はひとまずこれにて失礼します。


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