チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

チェンバロ日誌(2007年2月)

チェンバロ日誌
2月16日(金)
 バッハのトッカータ・ト短調を練習中! この曲は7年も前に一度演奏会で取り上げて以来です。 あの頃は非常に大変な曲に思えて、 とにかく押し寄せてくる音符の洪水を乗り切るだけで精一杯だった気がしますが、 今は「あれ?」と思ってしまうほど冷静に取り組めます。
 この7年間で何が変わったのかと考えてみると、 指が速く正確に回るように運動神経が発達したというよりは、 指が速く正確に回るのを妨げない手の構えや脱力の方法が身に付いたこと。 入り組んだ各声部をきちんと弾き分ける技術が向上したというよりは、 入り組んだ各声部それぞれに些細な音の変化にも喜怒哀楽を敏感に感じるようになり、 それらを可能な限り表現したい衝動が高まったのと、 その弾き分けが楽にできる指の使い方を学んだこと。 短期間で弾けるようになる初見演奏や暗譜の能力が高まったというよりは、 徹底した部分練習を柱とした無駄のない練習計画を自分に課す習慣が身に付いたこと。
 解釈に関して言えば、 昔の私は「この曲で何を訴えようか」と考えていたと思うのですが、 今は作品に真摯に取り組んでいれば成すべきことを作曲家がちゃんと教えてくれると信じて待つことができます。 自分らしさを意識して表現しようとすればそれは必ず作為的になります。 逆に「バッハが教えてくれたこの解釈はもしかすると他の奏者は気づいていないかもしれないので、 私がバッハの真意を代弁するんだ」というくらいに自分を前面に出さないことが大切なのだそうです。 これはとても謙虚な姿勢であると同時に、 「自分は作曲家の真意を分かっている」という大胆な自信の表明でもあります。 またこの自信が度を越すととたんに独りよがりになって作曲家から離れていくので恐ろしいことです。
2月27日(火)
 作曲してしまいました。 今シーズンの演奏会のアンコール用に何か有名な旋律を使って舞曲にアレンジできないかと考え出したところ、 今日はとてもよくアイデアが出る日で、 数分の小品ですが1時間で完成です。 こういう時は途中でやめないで勢いのあるうちに書き上げたほうがいいのです。 曲は超有名な日本の歌に基づくメヌエット。 ちゃんと短調の第2メヌエットもあってダ・カーポします。


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