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チェンバロ日誌(2012年10月)

チェンバロ日誌
10月17日(水)
 12月のカーブドッチでのコンサートのチラシができあがったので、 柏崎のチラシと一緒に県内のお客様宛てのダイレクトメール200通弱を発送しました。 実はチラシは一週間も前にできあがっていて、 封筒の宛名書きも全部終わっていたのに、 お客様への挨拶文を書く気分になかなかなれずにずっと放置されていたのです。 ダイレクトメールの挨拶文を書くというのは、 私にとってはコンサートの動機や意義を再確認して文章に残す大切な作業で、 チラシ作りと同じくらいに仕上がりが心の状態に左右されるので、 やる気満々の日が来るまでじっと待つしかありません。 それが昨日突然、書きたい内容がひらめいたので、 一気に書いて一気に印刷して一気に折り込んで発送したというわけです。 せっかくですので、以下にその挨拶文を転載します。
――(以下転載)――
拝啓
 野や山が少しずつ秋色に染まってゆくこの頃、 日々の色彩の変化が楽しみな季節になりました。 皆様いかがお過ごしでしょうか。
 このたびは毎年恒例になりました2つのコンサートをお知らせいたします。 柏崎はバッハ、カーブドッチはモーツァルトとバッハです。 また春にお知らせいたしましたが、 長岡のギャラリーmu・anさんでは「チェンバロ演奏とお話の会vol.3」と題しまして、 バッハのイギリス組曲の全曲演奏が隔月で進行中です。 このように、このところ私の関心は超有名作曲家の音楽に集中しておりますが、 今日はそのことについてお話しいたしましょう。
 数年前までのコンサートでは、 聴く機会のほとんどない作曲家を精力的に取り上げてまいりました。 「無名の作曲家でも、こんなに素晴らしい曲を残してくれたのです!」という私自身の驚きをお伝えしたい一心でした。 バッハなどは比較的CDも手に入りやすいし、 私が最優先に弾かなくてもよいだろう、というような考えもありました。
 変化のきっかけはギャラリーmu・anさんでの「チェンバロ演奏とお話の会」の企画だと思います。 これまでにバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻(全24曲)とゴルトベルク変奏曲(全曲)に取り組みました。 一回限りのコンサートと違って、 お客様が喜びそうな曲かどうかなど考えず、 とにかくすべての曲を徹底的に味わい尽くして、 それを心残りなく全部お話ししながらじっくりお聴きいただくということを何年も続けてまいりました。 その結果、今の私の驚きは「知っていたつもりのバッハの曲が、こんなにも奥深いものだったのです!」ということに集中しています。 恥ずかしながら白状いたしますと、 私自身がCDを聴いただけではその奥深さを聴き逃していました。 ですから、お客様にも私のお話をたくさん織り込みながらチェンバロの生の音でバッハをお聴きいただくことは、 私が最優先に取り組むに価することだと思うようになったのです。
 モーツァルトについては、 たった5歳や6歳の子供がこれほど完成された音楽を書いたということに私自身が本当に驚き、 この興奮が冷めないうちに何とか皆様にもお知らせしたいという一心です。 この先10歳、12歳と成長していくとどんな事になってしまうのでしょう? ちなみに、子供時代のモーツァルトはまだピアノを知らず、 これらはれっきとしたチェンバロのレパートリーです。
 バッハやモーツァルトなどの超有名作曲家に関しては、 非常に細かいことまで研究が進み、 私たちにも手に入りやすい形で公表されています。 ある曲が何年、何十年にもわたって推敲されていく過程が、 筆跡鑑定や五線紙の透かし模様やインクの成分分析まで駆使して明らかにされたりもしています。 また弟子へのレッスンのときに即興的装飾の例を作曲家自身が書き込んだ楽譜なども公表されています。 そうした、作曲当時の生々しい情報を学ぶことによって、 大作曲家はどのように思考するのかを垣間見ることができます。 この感性を私自身の中に少しずつでも育むことができれば、 他の作曲家の曲についても楽譜の裏にある生々しい成立の過程を感じることができ、 これまで以上に豊かな演奏ができるようになることでしょう。
 数年単位で私の演奏が大きく変わるとき、 「やろうとしてできなかった事ができるようになった」というレベルではなく、 「それまで考えもしなかった方向から音楽を見つめるようになった」という変化が起こっているようです。 そしてそれらが一回一回のコンサートで皆様から支えていただくことの積み重ねがあってこそ可能になったことも忘れません。 このたびもその大切なひとときを皆様とご一緒できることを願って、 皆様のご来場を心からお待ち申し上げます。
敬具


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