チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

八百板正己のCembaloニュースレター 2016年1月号(2016年1月29日発行)

印刷して郵便でお届けを始めたニュースレターの内容をここに転載します。
ニュースレターの郵送をご希望の方は、どうぞご遠慮なくお申し付け下さい。


チェンバロQ&A

Q:チェンバロにはどうして鍵盤が2段あるのですか? りゅーとぴあの大オルガンには鍵盤が4段もありますが、そんなに必要ないのではありませんか?(新潟市 Y様)

A:

前回とは別の新潟市Y様から、とても深いご質問です。

きちんと説明すると長くなってしまうのですが、せっかくの機会ですのでお付き合い下さい。

まず、歴史的にオルガンの話から始めましょう。中世の教会には、天井までそそり立つ大オルガンのほかに、合唱の伴奏やアンサンブルに使うやや小型の「ポジティフオルガン」(「置かれるオルガン」という意味で、数人で持ち運ぶことができます)もありました。大オルガンはひたすら荘厳で豊かな音、ポジティフオルガンは歌や他の楽器と調和する音、という具合に用途が違うので、音量も音色も全く違うものです。鍵盤はどちらも1段でした。

中世の次のルネサンス時代になって、オルガン奏者が演奏の都度これら2つのオルガンの間を行ったり来たりするのが不便だということで、2つのオルガンの鍵盤を1ヶ所に集めた2段鍵盤の楽器が作られるようになりました(その場合のポジティフオルガンはもう大オルガンの近くに固定されて持ち運ぶことはできなくなりましたが)。オルガン奏者は同じ演奏台に座ったままで、2段の鍵盤を弾き分けることで2つの異なるオルガンを自在に操ることができるようになったのです。2つのオルガンは元々別の目的で発達してきた別の楽器ですから、パイプの場所も、音量も、音色も、パイプに風を送る「風箱」や「ふいご」までも、全部別々でした。

ルネサンスの次のバロック時代になると、さらに多くのオルガンを1ヶ所に集めた楽器も現れました。ドイツではオルガンの足鍵盤が発達しましたが、これも低音に特化した別のオルガンとして追加されましたし、もっと個性的なオルガンを追加した3段鍵盤や4段鍵盤のオルガンまで作られました。バロック芸術の重要な理念に「対比」がありますが(絵画では真っ黒い背景に強烈に浮かび上がる人物像など)、バロック音楽でも大編成の合唱と少人数のアンサンブルが掛け合いを繰り広げたり、エコー(こだま)の効果を取り入れたりする場面で、オルガン奏者が複数のオルガンを1ヶ所で操れることは大変便利でした。

さて、チェンバロはオルガンよりも遅れて発明され、広く使われるようになったのも遅かった楽器です。音が小さいですから、専ら室内で楽しむ楽器として、基本的に鍵盤は1段の小さめの楽器が主流でした。

それでも、バロック時代に「対比」の価値観が重視されるとともに、オルガンの影響を受けて2段鍵盤のチェンバロも作られるようになりました。音色の異なる数組の弦をもち、それらが2段の鍵盤に割り振られました。こうしたチェンバロはオルガン奏者が家で練習するのにも重宝したと思います(何しろ当時のオルガンには電動送風器はありませんから、「ふいご」を動かしてくれる助手を雇わないと音が出せません。それに北ヨーロッパの冬の教会は氷点下の寒さで練習どころではありません)。

バロック時代も半ばを過ぎると、せっかくある2段の鍵盤を活用したチェンバロ曲も作られるようになりました。右手と左手が全く同じ音域で重なり合う曲や、エコーの効果を生かした曲、やがてはバッハのイタリア協奏曲やゴルトベルク変奏曲のように「2段鍵盤でなければ弾けない曲集」まで作られるようになったのです。

※ 質問をお寄せ下さい。 このコーナーに採用させていただきましたら、お礼にちょっとかわいい音符雑貨をひとつプレゼントいたします。


最近のFacebook投稿から

一昨年の夏に始めました「フェイスブック」で、私自身の音楽にかかわることを気ままに投稿しております。

お客様の中で既にフェイスブックを使っていらっしゃる方、ぜひ「友達リクエスト」を下さい。

12月8日

バッハのカンタータ全曲(200曲以上)の全楽章(1,000楽章以上)の編成データベースを作成中!

全集CD100枚以上、全集総譜約10,000ページを持ってはいても、新潟バッハ管弦楽団&合唱団の選曲に使うには「こういう編成で演奏時間何分くらいのアリアは何曲あるか?」という問いに答えられなければ宝の持ち腐れです。

カンタータ第1番から順に入力するような悠長なことはしていられないので、来年4月公演の選曲を詰めるのにすぐ必要な、 「トランペットとティンパニが使われる楽章すべて」 「二重唱すべて」 をまず全部洗い出しました。 CDと楽譜への索引も付けたので、これから1曲ずつ見てみます。

バッハの二重唱は、カンタータの中で合唱と対比させる意味もあって器楽編成が小さいのが普通ですが、1曲だけ 「トランペット2本、ティンパニ、弦楽合奏、ソプラノ、バス、通奏低音」 という珍しいものがありましたよ!(写真の楽譜がそれです)

12月13日

フェイスブック友達の方々から頂いたカラスの羽が素晴らしい!

チェンバロの弦をはじく爪は消耗品です。今日は久しぶりに時間を作って、寿命がきて弱っている爪をまとめて交換しました。少し前までは楽器商から安く安定供給される七面鳥を使っていましたが、カラスの羽に換えた所だけが今までになく高貴な音に生まれ変わるのです!

いっそのこと180本全部換えてしまいたい!

12月22日

朝一番にバッハのオルガン曲を練習中!

明日のコンサートではオルガンも弾きます。私は本業がオルガンではないので、手と足で別々の旋律を弾くのは結構頭が疲れますね。自作の練習用足鍵盤をチェンバロの下に置いて、音は出ませんが足の動きを覚え込ませるために繰り返し練習して本番に備えます。こういうことは頭が冴えている朝のうちにするのがいいみたいです。

12月25日

私のコントラバスが直ってきました!

数年前にネックが胴体からスポンと抜けてしまって、しかし時を同じくして多忙のため趣味でコントラバスを弾く時間が取れなくなっていたので、そのまま放置してありました(コントラバスさん、ごめんなさい!)

それが先日、新潟バッハ管弦楽団&合唱団にフルートで入ってくださった中学生の女の子が「コントラバスも弾けるけれど楽器がない」というので、この機会に直して貸してあげることにしたのです。

直していただいたのは、技術に定評のある(有)新潟弦楽器さん。「ここを取り替えればすごく良くなる」「ここに手を加えればもっと良くなる」と、たくさん提案をいただきまして、ネックを付け直すだけのつもりが、サドル交換、テールガット交換、駒削り、弓の毛替え、弓ウェイト調整と、今回はひとまず提案の半分ほどを実施していただきました。

結果は素晴らしいです! 何年も弾かずに放置していたとは思えないほど音が豊かになったし、A線のウルフも消えているし、弓も弾きやすいし。

そんなことをしている場合ではないのに、嬉しくて30分もボウイング練習をしてしまいましたよ。

1月6日

チェンバロを購入した生徒さん宅にて、調律レッスンをしてきました。

マンションの5階ですが、私の楽器と違ってエレベーターに乗るコンパクトサイズですから、持ち運びも楽そうです。私の楽器より弦も少ないし、小さいので調律が狂いにくいし。これからの時代は一家に一台のチェンバロ! あなたもお一ついかがですか?

1月8日

新潟大学教育学部で通奏低音の授業をしてきました!

チェンバロで伴奏を弾く(通奏低音)ときに、楽譜には右手の音符は何も書いてなくて全て演奏者の判断に任されます。通奏低音の理論は書物で学ぶこともできますが、今日はどんな書物にも書いてない実践的なノウハウをたっぷり一時間半しゃべりまくり、弾きまくりました。300年前に出版されたヘンデルのリコーダーソナタの楽譜(ファクシミリ=初版の復刻)を見ながら、「楽曲のこの部分の和声とリズムと対位法を私はこう解釈したから右手はこの音を弾くことにしました」という具合に、今日に向けてのここ数日間の私の思考過程そのものを凝縮して披露した次第です。まさに機密満載!

リコーダー奏者とヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のご協力も得て、ちょっと普通ではありえないような授業となりました。


ニュース

カーブドッチ・クリスマスコンサート「宮廷音楽三昧」のご報告

(12月23日 新潟市西蒲区 カーブドッチ)

ご来場下さいましたお客様、どうもありがとうございました。おかげさまで満席となり、ご予約をお断りしなければならない方も何人もいらっしゃいました。

終演後にお客様から頂いた感想をいくつかご紹介いたします。

「八百板先生の知ってほしい〜〜という気持ちがよく伝わりました。風間さん、すてきすぎます!! ファンになりました! また聴きます! 吉田さんのフルート、とてもよかったです。合うんですね。」(新潟市 N様)

「八百板さまの演奏を聞くのは2回目でした。吉田裕実さまの演奏は3回目でした。優雅な宮廷音楽を聞きながらおいしい食事をしてステキなクリスマスでした。ありがとうございました。バッハが大好きなので私も少しピアノをひきますので頑張って上手になろうと思います。ソプラノの風間さまの声は人をしあわせにする声でしたね。しあわせなクリスマス、新年を迎えられます。」(五泉市 K様)

「毎年このクリスマスコンサートを楽しみにしています。聞くたびにおごそかなそして豊かな気持ちにさせてもらっています。優雅な宮廷音楽に幸せな時間をありがとうございます。」(長岡市 Y様)

「普段音楽にはあまり興味を持たない妻が、案内をいただいて、私が行きたそうな顔をしていたら、すぐに帰りの運転手を買って出てくれました。お陰で今日参加出来、とても幸せです。先生の演奏は、mu-anと柏崎と、これで3度目です。来年は朝日酒造でのコンサート(Sando)も期待しています。」(長岡市 Y様)

「アンコールの曲をいっしょに歌いたかったですね(せめて歌詞の用意を)(ムリな注文かな?) いつものように楽しかったです。解説も(簡潔で)good!」(見附市 I様)

「今日は、とても良い会をありがとうございました。食事もおいしく、雰囲気もよく、ステキな音楽を聞くこともでき、年末のよい思い出になりました。小さな会場で生の演奏をきくというのは、とてもぜいたくだと思います。」(新潟市 S様)

「素晴らしい歌声、透き通った声とチェンバロとフルート。自分がタイムスリップした気持できかせて頂きました。感謝」(柏崎市 I様)

「毎年、温泉とお料理と、チェンバロの演奏、友人と2人で楽しませてもらっています。今年はせっかくの生BGM、近くでなかった為、ついおしゃべりに花が咲き、もったいない事をしてしまいました。やはり、チェンバロ、より近くで楽しみたいので、次は心して前の席をとりたいと思っています。今回のオペラ歌手の方の歌や演出ステキでした♪&ラストの4人の方のアンサンブル最高でした!」(新潟市 H様)

(注:「ラスト4人」というのは、チェンバロの譜めくりをしていた私の妻にもアンコールを一緒に歌ってもらったからです。その時は私もチェンバロを弾きながら歌いました!)

新潟バッハ管弦楽団&合唱団 団員追加募集の中間報告

前回のニュースレターに団員追加募集のチラシを同封いたしましたが、嬉しいことにたくさんの新しい仲間が加わってくださり、まだ少しずつ増え続けています。現在の団員内訳は以下のとおりです。

管弦楽:
ヴァイオリン(1人増えて8人)、ヴィオラ(1人)、チェロ(2人増えて5人)、
コントラバス(1人増えて2人)、ヴィオラ・ダ・ガンバ(1人)、
フルート(1人増えて6人)、オーボエ(1人増えて3人)、ファゴット(2人増えて2人)、
トランペット(1人増えて1人)、ホルン(2人)、ティンパニ(1人)、
チェンバロとオルガン(2人増えて5人)

合唱:
ソプラノ(3人増えて15人)、アルト(3人増えて14人)、
テノール(9人)、バス(7人)

合計82人

この中には、このニュースレターを受け取ってくださるお客様で、新潟バッハ管弦楽団&合唱団の11月の上越公演をお聴きになって感動なさり、思い切ってご参加下さったとおっしゃる方もいらっしゃいます。

チェンバロやバッハがご縁でこのニュースレターをお読み下さっているあなたこそ、私たちとご一緒にもっと深く音楽のお付き合いができたら素晴らしいと思うのです。想像してみて下さい。人類の遺産であるバッハの傑作群が、あなたの力を得て次々とここ新潟に鳴り響くのです。嬉しいご連絡をお待ち申し上げます。

チェンバロ教室の最近

昨年1年間で7人の仲間が増えました。昨年りゅーとぴあで行いましたバッハのインヴェンションとシンフォニアの講習会を受講した方で、「自分でもチェンバロを演奏して、もっと深く理解したい」といって入門してくださった方が多かったです。他には、ご自分ではチェンバロを弾けない方で、私のプライベート講義をお聴きくださる方が1人。特に嬉しかったのは、お仕事が忙しくて一旦辞めた方が退職とともに7年ぶりに戻ってきてくださったことです。

チェンバロ教室では楽器の購入は必要なく、家ではピアノやキーボードで練習を積み、レッスンの時に私のチェンバロをじっくり味わっていただいています。それでも、魅力に取り付かれてしまうとどうしても楽器が欲しくなるのですね。昨年はチェンバロを買った方が1人、クラヴィコードを買った方が1人いらっしゃいました。きちんと調べたわけではありませんが、人口当たりのチェンバロやクラヴィコードの台数では、新潟県はおそらく全国トップレベルだと思います。

速報:平均律クラヴィーア曲集第1巻(全24曲)の講習会開催決定!

昨年4月にバッハのインヴェンション(全15曲)の講習会、9月にバッハのシンフォニア(全15曲)の講習会を開催いたしました。その際に受講者の方々から「平均律クラヴィーア曲集などバッハの他の曲集も引き続き講習会で取り上げてほしい」とのご要望を数多く頂戴していました。

バッハの平均律クラヴィーア曲集は、後の時代のすべての音楽家に絶大な影響を与えて「音楽の旧約聖書」などと呼ばれることさえある大変重要なものです。第1巻だけでも24のすべての調の前奏曲とフーガからなる大きな曲集ですから、1日や2日の講習会では時間が全く足りません。それに、決して易しい曲ではありませんから私の準備期間も必要で、一度にあまり多くの曲を扱うと演奏のレベルも下がってしまいそうです。

そこで、ひとまず5月から8月まで毎月最終水曜日の午前午後に会場を確保しました。
第1回:5月25日(水)10:00〜16:00(予定)
第2回:6月29日(水)10:00〜16:00(予定)
第3回:7月27日(水)10:00〜16:00(予定)
第4回:8月31日(水)10:00〜16:00(予定)
会場:りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)スタジオA

4回の講習会に分けても、それぞれの回に6曲の前奏曲とフーガを徹底解説するには時間が足りませんので、全体の構成を合理的に工夫するのはもちろん、印刷物でもお伝えできることは可能な限り事前にお送りする必要があるでしょう。詳しいことは決まり次第このニュースレターでお伝えしてまいります。


ご質問、ご感想、ご意見などは下記までお寄せください。
E-mail : yaoita@tochio.net
親切、迅速にお返事いたします。

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