チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

八百板正己のCembaloニュースレター 2016年2月号(2016年2月29日発行)

印刷して郵便でお届けを始めたニュースレターの内容をここに転載します。
ニュースレターの郵送をご希望の方は、どうぞご遠慮なくお申し付け下さい。


チェンバロQ&A

Q:チェンバロの蓋の裏に書いてある言葉は何ですか?(新潟市 K様)

A:

そうですね。気になりますよね!

写真はどちらも私の楽器で、ラテン語の格言が書かれています。これらの楽器のモデルとなったバロック時代のチェンバロにもよく書かれたもので、意味は以下のとおりです。

MVSICA DONVM DEI
→「音楽は神の贈り物」
MVSICA LAETITIAE COMES MEDICINA DOLORVM
→「音楽は喜びの友、悲しみの薬」

DVLCISONVM REFICIT TRISTIA CORDA MELOS
→「愛らしい調べは悲しい心を癒す」
MVSICA DVLCE LABORVM LEVAMEN
→「音楽は苦しみを和らげる甘い薬」

一言で「悲しみ」といいますが、当時の人々はたとえ貴族など上流階級といえども、戦争や伝染病の流行などで現代では想像もつかないほどの深い深い悲しみに打ちひしがれたことでしょう。魂の救いを求めて、楽器におまじないを書かずにはいられなかったのでしょうか。

このほかにも、

SIC TRANSIT GLORIA MVNDI
→「このように栄光は移りゆく」
(チェンバロの音が減衰して消えてゆくことと現世のはかなさとを重ね合わせた)

OMNIS SPIRITVS LAVDET DOMINVM
→「全ての聖霊が主を誉めまつる」

DVM VIXI TACVI, MORTVA DVLCE CANO
→「生きている時に私は黙り、死んで甘く歌う」
(木が切り倒されてチェンバロに生まれ変わることで音楽を奏でるようになるという、キリスト教の「死と復活」の象徴として楽器を捉えた)

といった格言も書かれたそうです(出展:渡邊順生「チェンバロ・フォルテピアノ」東京書籍、2000)。

※ 質問をお寄せ下さい。 このコーナーに採用させていただきましたら、お礼にちょっとかわいい音符雑貨をひとつプレゼントいたします。


最近のFacebook投稿から

一昨年の夏に始めました「フェイスブック」で、私自身の音楽にかかわることを気ままに投稿しております。

お客様の中で既にフェイスブックを使っていらっしゃる方、ぜひ「友達リクエスト」を下さい。

1月25日

脱出!

私のお城であります見附チェンバロスタジオに閉じ込められて30時間、大家さんが重機で道をつけてくれたので、今夜は無事に家に帰れます。

それにしても、今日は雪掘りでいい汗をいっぱいかいたので体の調子がいいですね!

2月3日

クラヴィコードの弦の張り替えです!

チェンバロ教室の生徒さんが、ご自分のクラヴィコードの弦を切ってしまいました。今日はレッスンの時間に楽器を持ってきていただき、私が張り替えて差し上げた次第です。

自分のチェンバロと少々勝手が違って手間取りましたが、30分ほどで作業は完了です。

2月6日

群馬県桐生市にチェンバロを運び込みました!

明日のコンサートではヴィヴァルディの協奏曲を8曲も演奏するんですよ。まもなくリハーサル開始です。

2月15日

バッハの平均律クラヴィーア曲集をヴァイオリン奏者に弾いてもらっています!

5月から8月にかけて、バッハの代表的なチェンバロ曲集の講習会を4回シリーズで計画しています。論点の一つに「弦楽器のスタイルを意識したチェンバロ曲は、弦楽器の弓使いを理解して演奏に反映させる」ことを取り上げます。私はコントラバスは少々弾けてもヴァイオリンは弾けませんから、専門家に疑問点をぶつけてみた次第です。

何だかんだと2時間近く、とても勉強になりました! 勢い余って、今度から私もヴァイオリンのレッスンをしていただくことになりましたよ。

2月19日

私は吹けませんが。

新潟バッハ管弦楽団&合唱団にはすごい楽器コレクターがいます。使うあてがなくても世界中からいろいろ輸入しては「こんな楽器が手に入ったけど、使いませんか?」と気前よく貸してくれるのです。

今回の楽器はロータリートランペット! ピストンではなくて、ホルンのようにロータリーバルブで音程を変えます。クラシック音楽向きだと言われているようです。

新潟バッハ初のトランペット奏者が入団したことを伝えたら、わざわざ楽器屋さんに整備に出して貸してくれることになりました。それだけではなく、1台より2台あったほうがいいでしょうと言って、ドイツからもう1台輸入してくれたのです! 素晴らしい友を持って幸せ!


ニュース

群馬県桐生市で演奏してきました

(2月7日 アンサンブル"クヴェレ" 桐生市市民文化会館)

群馬交響楽団コンサートマスターの風岡優氏が設立した弦楽合奏団の一員として、10年前の初公演から毎年冬にチェンバロを運んで桐生市で演奏を続けてきました。今年はヴィヴァルディらによるさまざまな編成の協奏曲を8曲も! チェンバロ(私)とコントラバス以外のほぼ全員がソリストとして活躍しました。10年の間に皆さん素晴らしく成長なさいましたね。

10年前の初公演を思い返すと、いつもチェンバロ独奏か、せいぜい2〜3人のアンサンブルしか経験がなかった私にとって、15人前後の弦楽合奏の全パートを聴きながら的確な通奏低音をこなすのは課題山積でした。しかも他のメンバーは何度も何度も練習に集まるのに対して、群馬県外在住の私だけは本番前日に現地入りして一気に本番になだれ込むので、あらゆる解釈の可能性を事前に考慮して準備しておかなければならないのも私の能力を超えた難題でした。

今回のように、8曲の協奏曲の通奏低音を3週間(そう、たったの3週間です。楽譜がなかなか届かないので練習が始められないのです)で仕上げるなどということは、10年前の私には絶対できなかったでしょう。私をここまで育ててくれたこの団体での経験が、今の新潟バッハ管弦楽団&合唱団の活動に非常に役立っているのは確かです。通奏低音を弾く技術が向上したというだけではなくて、その場で鳴っている各パートの音を全体として把握しイメージする能力が備わってきたことも大きいです。ステージ上では隣のチェロやコントラバスは大きく聞こえるのに自分が弾いているチェンバロの音はあまり聞こえず、遠くにいるヴァイオリンの音はもっと聞こえなかったりしたものですが、今ではかなりイメージで補うことができるのです。

桐生市のホールを毎年ほぼ満席にしてきたこの団体の活動ですが、来年の冬の公演をもって解散することになりました。メンバーがみな成長して忙しくなり、集まるのが難しくなってきたというのです。そういう良い理由による解散ならば、喜ばしいこととして受け止めたいですね。

新潟バッハ管弦楽団&合唱団 長岡公演(4/16)のチケット発売開始

1年前に結成した新潟バッハ管弦楽団&合唱団の、通算4つ目となる公演です。長岡リリックホールには備品として移動式の小型パイプオルガンがあって、毎月の練習でありがたく使わせていただいています(管弦楽と合唱の練習にパイプオルガンが活躍するというのは、バッハを専門に演奏する私たちならではのことでしょう)。そのパイプオルガンをコンサートホールに持ち込み、昨年よりもさらに編成の大きな、さらに演奏困難な、バッハ芸術の神髄に迫ろうという意欲的なプログラムです。それでいて、音楽経験数年という初級メンバーも無理なく参加できるようにベテランがサポートし、バッハの音楽が少しでも多くの人に開かれたものになるように努めています。

どうやら全国的にも注目を集め始めているらしい私たちの活動の成否が、あなたのご声援にかかっています。会場でお目にかかれることを心からお待ち申し上げます。

平均律クラヴィーア曲集第1巻講習会に素晴らしい共演者の可能性?

4ページにも書きましたように、この講習会の論点の一つに「弦楽器のスタイルを意識したチェンバロ曲は、弦楽器のボウイング(弓使い)を理解して演奏に反映させる」ことを取り上げます。バッハの時代のドイツは、先進国イタリアのヴァイオリン音楽(ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲など)を熱狂的に受け入れました。バッハは鍵盤音楽にもヴァイオリン特有の音形を多用して(鍵盤楽器で弾きにくくても、そういうことはバッハは全く気にしません!)、鍵盤音楽の語法を大きく広げました。

と講習会で私が言葉で説明するだけではなく、素晴らしいヴァイオリン奏者を県外からお呼びして、平均律クラヴィーア曲集の中から弦楽器風の旋律をヴァイオリンで弾いて見せていただける可能性が出てきました。目の前で見たばかりの弓の動きと聴いたばかりの弦の音を、今度はその場で鍵盤楽器に移すにはどう工夫するか? といった講習会を想像してみて下さい。実現すれば、他ではほとんどあり得ない画期的な学びの機会となることでしょう。

詳しいことは決まり次第このニュースレターでお伝えしてまいります。どうぞご予定を空けておいて下さい。

第1回:5月25日(水)10:00〜16:00(予定)
第2回:6月29日(水)10:00〜16:00(予定)
第3回:7月27日(水)10:00〜16:00(予定)
第4回:8月31日(水)10:00〜16:00(予定)
会場:りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)スタジオA


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