チェンバロ奏者 八百板正己 のホームページ

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私の住んでいた栃尾

(このページは新潟県栃尾市在住当時の2000.01.15に「私の住んでいるところ」というタイトルで作成したものです。)


栃尾

 私の住む栃尾市は新潟県のほぼ中央にある、山に囲まれた静かなところです。 長岡市、見附市、下田村、山古志村、守門村と接していますが、どこに行くにも峠かトンネルを通る必要があります。 人口は2万6000人で「この人口でよく市になれたものだ」と思いますが、その上さらに毎年減り続けています。 私のように他所から移り住むとそれだけで話題の人物になります。

自然環境

 その栃尾市の中でも私の住んでいる集落はずっと奥まったところにあり、コピー1枚取るにも一番近いコンビニまで車で15分かかります。 その代わり自然環境は抜群です。ウサギもタヌキもフクロウもイワナもいます。 夜になれば満天の星空で天の川もバッチリです。 昼間必死になってバッハの難曲をさらっていてふと窓の外を眺めると、そこには何と美しい田園風景が広がっていることでしょう! 練習などやめて散歩に出かけたい衝動との戦いです。

 いっぽう、冬になると今度は生きるために雪との戦いです。 朝、玄関を開けると雪が中にドドッと入ってくるありさまです。 (参考までに、雪国の玄関はすべてスライド式です。 無雪地域のように蝶番で外に開く式だと雪に閉じ込められてしまいます。) 一晩で40cmも降った日の朝は玄関からの道付けだけでも汗をかきます。 水道も凍るので出しっぱなしにします。

静寂

 でも、雪が降っている時というのはものすごく静かなのです。 普段なら聞こえるはずの周囲の生活の音が全く聞こえなくなるのです。 聞こえるのは時計の針の音と冷蔵庫の音、それと自分のこめかみを血が流れる音くらいです。 自分が弾くチェンバロの音も余韻の細部まで気になりすぎるほど聞こえます。 私の調律が早いのも、ヴォイシング(爪の具合によって音量や音質がばらつくのを整える作業)をこまめにする癖も、この雪国暮らしに一因があるかも知れません。

人情

 音楽家というのは正直なところ生活も決して楽ではありませんが、栃尾という土地柄なのでしょうか、 24時間周囲に気兼ねなく練習できるようにと破格の安値で一軒家を貸してくださる方や、季節の野菜を毎週のように届けてくださる農家の方など、 多くの人情厚い方々のおかげでこうして演奏活動が続けられます。 「私は将来ここに家を建てて永住したいです。」と話したところ、「みんなここを出て行くばかりだというのに」とまるで涙を流さんばかりに感心してくださる近くのお婆さんもいます。

 こういう所に住んでいると人間は自ずと謙虚になるようです。 自分ではまだよく分かりませんが、私の演奏する音楽にも何かしら影響を与えているような気がします。


栃尾市ホームページも是非ご覧ください。


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