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アンサンブル・クヴェレ第2回公演コンサートレター寄稿文

2006年12月7日に群馬県桐生市の市民文化会館で行われた「アンサンブル・クヴェレ演奏会」に出演しました。 会館が発行したコンサートレターに私が寄稿した文章が掲載されましたので、会館の許可を得てここに転載します。


前回に引き続き新潟県からチェンバロを車に積んで桐生までやってまいりました。 日本のチェンバロ演奏家の多くが大都市圏に一極集中して、 一年間に一度も音が鳴らない県もあるほどですから、 新潟に拠点を置いてチェンバロの普及に心血を注ぐ私としてはお隣の群馬県でもチェンバロを奏でる機会を与えられたことは本当に嬉しいです。 200年ほど前にピアノが普及してチェンバロは一度姿を消してしまい、 本場ヨーロッパでも復活したのはここ数十年のことですから、 チェンバロがもっともっと普及してバッハやヴィヴァルディなどのバロック音楽のアンサンブルがもっともっと演奏されるようになることを願っています。

そんな中で代表の風岡氏は今回もプログラムの半分をバロック音楽に充てて私を呼んでくださいました。 前回の公演以来私のほうでも風岡氏を何度も新潟にお呼びして一緒に演奏会を行いましたから、 住むところは遠く離れていてもお互いの音楽観を今まで以上に理解したうえでの今回の桐生公演では、 いっそう密度の高いアンサンブルができたと思っています。

紙面をいただいたこの機会に、チェンバロ演奏の裏話を披露いたしましょう。
まずは調律です。 見かけはグランドピアノに似ていても構造は弦楽器そのものですから、 演奏会場のようにライトが当たったりお客様の出入りがあったりする環境では調律が1時間しか持ちません。 そのたびに調律師を呼んでいては破産してしまうので当然自分でおこないます。 開演前の30分間に調律をしている私の姿にお気付きになったでしょうか。 そうです、チェンバロ奏者に休憩時間は無いのです。

次に楽譜です。 ヴァイオリンもチェロも、 みんな自分が弾く音だけが書かれた「パート譜」というものを見ながら演奏しますが、 チェンバロ用のパート譜というのは無いのです。 そのかわり「スコア(すべてのパートの音がまとめて書かれた指揮者用の楽譜)」を見ながら、 なかば即興的に演奏します。 バッハやヴィヴァルディの時代は作曲家自身またはそれに次ぐ実力者が作品全体の理解の上に立ってチェンバロを弾きながらアンサンブルを統率する習慣でしたので、 チェンバロ用に楽譜を作る必要がありませんでした。 それに楽譜を作って弾く音を固定してしまっては、 その場の状況に応じて大胆に音を増減しながらアンサンブルの土台を的確に支える自由さが失われてしまいます。 今回も時間と予算の都合で私が練習に参加したのは演奏会当日午後のゲネプロ(Generalprobe:ドイツ語で「総リハーサル」)からでしたから、 事前にあらゆる可能性を想定していろいろな弾き方を準備しておいた上でぶっつけ本番のようなスリル満点のステージをこなすのがチェンバロ奏者の宿命でもあります。

チェンバロの音は小さく、 10人を超えるアンサンブルの中ではお客様にはよく聞こえないかもしれません。 しかしステージ上の他の演奏者に与える影響は絶大なのです。 次回の公演中もしアンサンブルがグチャグチャに乱れる事態が発生したら、 それはチェンバロの責任と思っていただきましょう。 逆にキリリと引き締まった良いサウンドが聴かれたら、 理由の一部は確かにチェンバロにもあると思っていただけると嬉しいです。 次回また桐生でお目にかかれることを楽しみにしております。


桐生市市民文化会館ホームページも是非ご覧ください。


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