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エンリーコ・バイアーノ氏マスタークラス受講レポート

2007年7月29日と30日、東京の古楽研究会の主催で行われたエンリーコ・バイアーノ氏の公開講座とマスタークラスを受講しました。 同会の会報に私が寄稿した印象記が掲載されましたので、同会の許可を得てここに転載します。


古楽研究会会員の皆様、はじめまして。 このたびバイアーノ氏(注1)のマスタークラスに新潟から泊りがけで2日間参加いたしました。 以下はその印象記です。

初日は私にとって初めての古楽研究会ビル訪問です。 とってもオシャレでステキな所と勝手に思い込んで行きますが、 案外普通のビル(注2)なのですね(失礼!)。

まずはレクチャーコンサートです。 配られた曲目リストには知らない作曲家がずらーり! 全部ナポリの作曲家。 期待に胸が膨らみます。 氏は「フレスコバルディが突然現れたのではない」とナポリ鍵盤楽派(と訳してよいのか分かりませんが)の重要性を力説します。 唖然とする奔放さ!現代音楽ばりの凄い不協和音! それに比べればフレスコバルディは控え目です。 彼は新しい世界を切り拓いたのでなく、新しい世界を集大成したのか?

実に心躍る2時間でしたが、何といっても時間が足りない印象でした。 通訳の方は几帳面に全部訳されていましたが、 「今のは分かりますね?」で済ませるといった柔軟性もあればよかったでしょうか。 時折残念な誤訳もみられました。

お茶とお菓子が振舞われた休憩時間、 私はこの時とばかりに氏のCDを買い占めました(注3)。 その後は氏による初級者向けレッスン! 何と贅沢な企画! レッスン対象は初級者でも、指摘の一つ一つに理由を明らかにされるので、 聴講してとても勉強になりました。

2日目はマスタークラスを受講しました(注4)。 テーマは17〜18世紀のイタリア鍵盤音楽。 今日は通訳なしですが、 氏の英語はゆっくり易しい言葉を選びながら話され、 また時々ローマ字読みになるので、 とても聴き取りやすかったです(英語は苦手なのかも?)。

時期外れの雷と豪雨の中で披露された内容の一部をご紹介しましょう。 フレスコバルディのパルティータやトッカータは、 モノディー、多声マドリガーレ、モテット、器楽リトルネッロといった当時のあらゆる種類の音楽の一覧(注5)だったとは! バッハの組曲がもつ網羅性を思い起こしました。 また細かい音符はイタリア初期バロック特有の装飾音で声楽由来なので急がずに優美に弾く(注6)べきだとは! ファルセットで実際に歌ってくださるのでイメージが鮮明に焼きつきます。 スカルラッティも目から鱗でした。 テンポをすごく動かしますが、それが実に自然なのです! 楽譜どおりに弾いている我々受講生のほうがずっと不自然に感じられます。 左手の和音連打は「かかとを踏み鳴らす踊り」の模倣だとかで、 粗野な感じで踊ってみてくださります。 やっぱりイタリア人からしか習えないことってありますよね?

有意義な2日間、今までの弾き方がみんなひっくり返るようで却って疑問が増えた気もしますが、 それだけ本質的なことを教わった証でしょうか、 時間をかけて消化していきます。

勝手な想像と違って案外普通のビル(?)だった会場も、 2日間かよったら親近感が湧いてきました。 またお邪魔しますので今後も素晴らしい企画をお願いいたします。


注1:
エンリーコ・バイアーノ氏はイタリア・ナポリ出身のチェンバロ奏者。 このたび東京で行われたドメニコ・スカルラッティ没後250年を記念する大規模なイベントに、 チェンバロ奏者として招かれて来日しました。

注2:
会報が届けられて記事で知ったのですが、 ビルの1階部分の改装がこれから始まり、 2007年秋にはステキななホールが誕生するそうです。

注3:
時代順にカベソン、フレスコバルディ、17世紀ナポリ鍵盤楽派、 ヴィヴァルディの協奏曲の鍵盤用編曲、ドメニコ・スカルラッティ第2集です。 あまりに素晴らしく、毎日順番に聴いています。 スカルラッティの第1集も欲しいと思って新潟市東堀の輸入CD店コンチェルトに問い合わせると、 旧譜の入荷率が極端に悪いレーベルなので期待できないとか。 ああイタリア人のいい加減さよ! ところが先日入荷のお知らせが届いてホッとしました。

注4:
受講資格は「チェンバロ演奏家」で、レベルの高いレッスンが行われました。

注5:
ほとんどの人が「自由な部分と厳格な部分の交替」だと思い込んでいると思います。

注6:
ほとんどの人が「技巧を誇示する部分」だと思い込んでいると思います。


古楽研究会ORIGO et PRACTICAホームページも是非ご覧ください。


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